はじめに
2018年3月下旬にGSI クレオスさんから発売された”ガンダムマーカーエアブラシ システム”。ガンプラに限らず模型を造る者にとっての最初の関門とも言える塗装に対しての一つのソリューションを示してくれた商品だと思っています(横文字を使ってみました)。
個人的にはずいぶん前から塗装してみたかったのですが、①何が必要か、②それにはいくら必要か、③毒性や臭いはどうなのか、④部屋は汚れないのか、⑤仕上がりはどうなのか等でかなり悩みましたが、結論を先に申し上げると模型初心者の方には強くお勧め出来ると思います。本記事では上記の疑問への回答と塗装素人である私の塗装した実例を交えてガンダムマーカーエアブラシで出来ることをご紹介させていただきたいと思います。
また、安全のためメーカー発行の取扱説明書に従った使用をお願い致します。未成年の方はご家族の方とのご使用をお願い致します。
何が必要か
本格的な塗装をされる方は数多くの道具や装置を導入されていると思いますがガンダムマーカーエアブラシを用いた塗装では以下のものだけ塗装出来てしまうのが特徴です。
・ガンダムマーカーエアブラシ システム
・ガンダムマーカー
・塗装対象(ガンプラ、パーツ、フィギュア等)
・ペインティングクリップ(あった方が便利)
・塗装ベース(ダンボールで代用可)
・ダンボール等
いくら必要なのか
ここではガンダムマーカーエアブラシを使うに当たり実際いくらかかるのかをご紹介させていただきます。まずはメインである”ガンダムマーカーエアブラシシステム”ですが送料込みで3,000円位かかります。
お次は”ガンダムマーカー”ですがバラ売りとセット売りの2種類があり、バラは200円くらい、セットは1,000円くらいが目安となっています。ガンダムマーカーとして販売されている色以外は基本的に使用出来ない事、またセット売りしかされていない色もありますのでご注意下さい。
ニューホワイト | アイグリーン | イエロー | ブルー |
アドバンスセット | メタリックマーカーセット | ジオン軍マーカーセット | MSVセット |
続いてはペインティングクリップで価格は800円程度です。なければ塗装出来ないという事もないですがあった方が圧倒的に便利です。
そしてペインティングクリップを立てておく塗装ベースもあった方が便利で価格は1,000円前後です。ペインティングクリップをダンボールに刺しても代用出来るので必要ない場合は用意しなくても大丈夫です。
そして最後はダンボールです。こちらは塗装ブースとして使います。ボックス形状であればなんでも大丈夫です。因みに塗装ブースとしてはスリーエムさんの”Spray Booth”等があり価格は1,000円程度です。
という事で6,000円程度用意出来ればガンダムマーカーエアブラシシステムで塗装を始める事が出来ます。これでも学生さんにとっては少し手を出しににくいイメージが残ってしまいますが、お小遣を頑張って貯めるかご両親にお願いしてトライする価値はあるかと思います。一方、収入のある方にはかなり敷居は下がったのではないでしょうか。もし飽きてしまったとしてもまだ諦めの付く価格ではないかと思います(笑)。
毒性や臭いについて
塗料の種類は多岐にわたる現在で一般的な事柄を申し上げるのはなかなか難しいですが、あくまで私のイメージですが玄人の方が使われている主な塗料はラッカー系と呼ばれ、主成分はトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン等の脂溶性の高い(脂に良く溶ける/脂を良く溶かす)物質が使われています。
これらの化合物は揮発性が高く、臭いも強い上、健康への影響が大きいです。俗に呼ばれるシンナーがこれですので健康への被害が予想出来るのではないでしょうか。また、塗装後の後片付けにも有害で臭いの強い溶剤を使う事になるので気軽な塗装とは行かず、塗り残しを見つけた際のちょっとした塗装は気が重いです。悪い事ばかり書きましたが、ラッカー系塗料は塗膜が強く、発色がきれいで乾燥も早いなど大きなメリットがあります。玄人の方々には愛用され続けているのはこう言った理由で、設備投資してきちんとした換気環境をを作って健康への配慮が出来るのであれば強力な武器となってくれると思います。
一方、今回ご紹介しているガンダムマーカーエアブラシシステムにて使用するガンダムマーカーはアルコール系塗料です。アルコールと言えばお酒や消毒液に含まれているエタノール等が有名ですがラッカー系塗料と比較して、揮発性が低いので臭いも弱く(個人的には気になりません)、毒性が低いです(無害ではありません)。加えてマスキングを抜けば3分あれば塗装出来てしまい片付けも3分あればお釣りが来てしまうのが魅力です。しかし、デメリットもあるのも事実で、ラッカー系塗料と比較すれば塗膜や発色が弱く、乾燥時間が長くなります。また、ガンダムマーカーとして発売されている以外の色は基本的に塗装出来ません。以下に毒性や臭いと共にメリットとデメリットを表としてまとめてみましたのでご参考にしてみて下さい。
ガンダムマーカーエアブラシ | ラッカー系塗料を使ったエアブラシ | |
メリット | 臭い/毒性:弱い
→家族がいても安心 メンテナンス:すごい楽 →やる気が出る イニシャルコスト:低い →初めやすい 運転時騒音:小さい →夜でも出来る |
塗膜/発色:強い
→うらやましい 乾燥時間:短い →うらやましい 色の選択肢:多い →うらやましい ランニングコスト:低い →うらやましい 連続使用時間:長い →うらやましい |
デメリット | 塗膜/発色:弱い
→トップコートでカバー 乾燥時間:長い →他の作業を並行する 色の選択肢:少ない →既存の色でも遊べる ランニングコスト:高い →小型コンプレッサーを導入 連続使用時間:短い →エアカン数本で使い回す ガンダムマーカーの先端への塗料の充填作業が必要 →専用替え芯の使用で改善 |
臭い/毒性:強い
→自分のみならず家族への影響を良く考える メンテナンス:大変 →けっこう面倒臭い イニシャルコスト:高い →社会人でも一通り揃えるのは大変 運転時騒音:大きい →家族やマンション住まいの人は注意 |
部屋は汚れないのか
これはネットで検索しても意外と欲しい情報が得られなかった気がします。私も小さいながら家を持つようになったので新居が汚れてしまってはと少し悩みました。しかし、ガンダムマーカーエアブラシシステムを3ヶ月使用した経験より結論から言えば汚れません(正確には汚れは認識されていません)。私は主にリビングでベージュの絨毯の上でガンダムマーカーエアブラシシステムを使っておりますが気になる汚れは今のところないです。ただし、ガンダムマーカーのキャップを外したまま振混ぜた場合に塗料が飛散する可能性があるので必ずキャップをしてから振るようにする事には注意して下さい。
因みに私は絨毯の上に塗装ブースの変わりのダンボールを置いてガンダムマーカーエアブラシで塗装しています(笑)。
※毒性が低いとは言え無害ではないので必ず換気をしてご使用下さい。
仕上がりはどうか
さて、ここまでガンダムマーカーエアブラシシステムの良さをお伝えして参りましたが肝心の仕上がりはどうなのかと言うところを実例を交えてご紹介させていただきます。とはいえガンダムマーカーエアブラシの性能と私の塗装技術は分離出来ませんので塗装初心者がガンダムマーカーエアブラシを使った場合の仕上がりとして見ていただければ幸いです。こんな事が出来るのかと思っていただければ嬉しいのですが、この程度かと思われてしまうとメーカー様に申し訳ないので何卒ご理解の程よろしくお願い致します。
塗装例
MOBILE SUIT ENSEMBLEのビーム・サーベル
まずはこのブログでも良くレビューさせていただいているMOBILE SUIT ENSEMBLEの塗装例からです。今回は1.5弾の武器セットよりクリアパーツのビーム・サーベルをガンダムマーカーエアブラシで塗装して行きます。下がランナーに繋がっている状態です。
ガンプラ同様にニッパーで切り出しました。
下の画像のようにペインティングクリップや爪楊枝で被塗装物を固定します。
ガンダムマーカーエアブラシシステムを準備します。慣れれば20秒位で十分組めます。因みに下の画像では420mLのエアカンを繋いでいますが初期は190mLのエアカンが付属しています。
後はエアカン上部のネジを回して送気してガンダムマーカーをセットしてハンドピースのトリガーを押せばエアーと共に塗料が噴射される仕組みです。
塗装は塗装ブース(ダンボールで代用可)上で行います。下はビーム・サーベルの柄の部分をガンダムマーカーのニューホワイトで塗装した画像です。塗装自体は3分もかかりません。乾燥時間については判定が難しいので検証してませんが24時間後は問題なさそうです。
そしてビーム・サーベルのビーム刃部分です。ガンダムマーカーのガンダムレッドで塗装してみました。
そして一晩経った後に組んでみたのが下の画像です。素人塗装ですが少しでも良いなと思っていただけた方には是非ともお勧めしたいです。
更に、ガンダム(G3)にビーム・サーベルを持たせた状態での1枚。ガンダムマーカーエアブラシではちょっとした練習でこのような事が誰にでも簡単に出来るのが特徴です。
MOBILE SUIT ENSEMBLE 第1.5弾 ガンダム(G3)のレビューはこちらこちらからどうぞ。
MOBILE SUIT ENSEMBLEのヒート・ホーク
続いてご紹介するのは同じくMOBILE SUIT ENSEMBLE 1.5弾の武器セットのヒート・ホークです。こちらはビーム・サーベルと違いワンピースなのでマスキングが必要で少し難易度が上がっている感じもします。
まずはブレード部分をガンダムマーカーのイエローでざっくり塗装しました。
一晩置いた後に黄色を残す部分をマスキング・・・
残りの部分をガンダムマーカーのグレーで塗装しました。
一晩経ったらマスキングテープを剥がして完成です。ガンダムマーカーエアブラシの塗膜は残念ながらラッカー系塗料に比べて弱いのでマスキングテープを貼る時には手に何度か手につけて粘着力を下げてから使う様にしたり、剥がす時には気を付けてあげると塗り分けも上手く行くのかなと思います。また、ハゲてしまたところはガンダムマーカーでリタッチしてあげるとリカバー出来たりします。
そしてこちらがMOBILE SUIT ENSEMBLE 1.5弾のザク(マーキングプラス)にガンダムマーカーエアブラシで塗装したヒート・ホークを装備させた画像です。今回はしてないですが墨入れも可能です。
MOBILE SUIT ENSEMBLE 第1.5弾 ザク(マーキングプラス)のレビューはこちらこちらからどうぞ。
MOBILE SUIT ENSEMBLEのアーマー・シュナイダー
ここからはMOBILE SUIT ENSEMBLE 第10弾のMS武器セットのストライクガンダム用のアーマー・シュナイダーの塗装例です。まずは塗装前が下の画像で成形色一色ですね。
今回は刃部分のみ塗装したいので柄の部分のみマスキングします。ここは塗装ハゲの心配はないのでマスキングテープもそのまま貼ってしまって大丈夫です。
何色で塗るか迷ったものの今回はシルバーを選択・・・初の試みでしたが良い仕上がりではないでしょうか(笑)。
乾燥後にマスキングテープを剥がして完成です。
そしてエールストライクガンダムに装備させたアーマー・シュナイダーの画像がこちらです。このお手軽さでこれだけの恩恵が受けられるのは非常に嬉しいところです。
因みにMOBILE SUIT ENSEMBLE 第10弾 ストライクガンダムのレビューはこちらからどうぞ。
MOBILE SUIT ENSEMBLEのビーム・ホーク
今回はMOBILE SUIT ENSEMBLE 第10弾のギラ・ズールのビーム・ホークの塗装をご紹介します。ビーム・ホークも下の画像のようにクリアパーツとなっています。
まずはざっくりとビーム部分をガンダムマーカーエアブラシを使って塗装・・・ガンダムマーカーはアイグリーンを使ってみました。
続いてグレーで塗装したい部分を残してビーム刃部分をマスキングして行きます。ビーム刃の付け根はカーブがあるので下の画像のようにマスキングテープを小さく切って繋げて行きました。
境目をマスキング出来たら下の画像のようにビーム刃部分をざっくりとマスキングします。
ここでガンダムマーカーのグレーを使ってガンダムマーカーエアブラシで塗装したのが下の画像です。
翌日にマスキングテープを剥がして完成です。前述の通りガンダムマーカーの塗膜はあまり強くないのでトップコートを吹いてあげると塗装ハゲ防止になると思います。
下の画像がMOBILE SUIT ENSEMBLE 第10弾のギラ・ズールにガンダムマーカーエアブラシで塗装したビーム・ホークを装備させた画像です。
因みにギラ・ズールのレビューはこちらからどうぞ。
MOBILE SUIT ENSEMBLE のビーム薙刀
MOBILE SUIT ENSEMBLE 22弾のディジェ用のMS武器セットのビーム薙刀の塗装方法もご紹介しておりますのでご興味のある方はこちらもご覧下さい。
FG プリムローズ
ガンダムマーカーエアブラシシステムはもちろんガンプラにも使用出来ます(笑)。下の画像は電撃HOBBY MAGAZINEの付録であったプリムローズの塗装前の画像です。
塗装以外にもディテールアップしていますがガンダムマーカーエアブラシシステムで塗装したプリムローズの画像です。
下の画像は塗装前の試作型ウィンチ・キャノンの画像です。こちらも白一色です。
カラーチップやスジ彫り、デカールの貼付けも行っていますが色が付いている部分は全てガンダムマーカーエアブラシシステムで塗装していて素人である私にとってはもの凄く強力な武器になってくれます。
FG プリムローズの完成品のレビューはこちらこちらからどうぞ。制作記録もご覧いただけます。
HGUC ガンダムTR-1[ヘイズル改]のビーム・ライフルの改造
下の画像はHGUCガンダムTR-1[ヘイズル改]のビーム・ライフルを改造しているところでメインバレルの増長、ロング・ブレードとアングルのスクラッチ、キハールIIのシールド、エネルギー・パックの増設をしているところです。
改造武装の詳細はこちらからどうぞ。
そして上の画像のパーツを組んだトップコート前の改造ビーム・ライフルが下の画像です。こんな事も出来るのでコスパはかなり良いと思います。
こちらが完成した改造武装の画像(上)とヘイズル改に持たせた画像(下)です。背景があると3割増しくらいに見えますかね(笑)。
HGUC ガンダムTR-1[ヘイズル改]
ここからはHGUC ガンダムTR-1[ヘイズル改]のガンダムマーカーエアブラシシステムによる部分塗装による作例です。
何処を塗ったのか?と言う質問があるかと思いますがご興味のある方ははレビューをこちらからどうぞ。
ハンドパーツの指先の塗り分け
A.O.Zの機体で良く見られる指先を赤く塗装する事も出来ます。まずは下の画像のようにマスキングを行って・・・
ガンダムマーカーのレッドで塗装します。発色が悪い時はガンダムマーカー良く振って2、3回重ね吹きするときれいに発色してくれます。
マスキングテープを剥がして完成です。後は墨入れしてトップコートしてあげると完成度も高く塗膜を保護する事が出来ます。
指先を赤く塗装するディテールアップの詳細はこちらからどうぞ。
HGUC ガンダムTR-6[ウーンドウォート](グロリア・ザビ専用機)
続いて個人的には初の全塗装となった2020年1月現在プレミアムバンダイさんからオンライン限定で発売されているHG ガンダムTR-6[ウーンドウォート]の実例です。当該キットの成形色は白なのですがベースカラーを黒にしてみました。ガンダムマーカーの弱点である塗膜の弱さもありトップコートを吹くまでは苦労もありましたが素人の私が全塗装出来るきっかけをくれたガンダムマーカーエアブラシシステムには感謝したいです。※塗装のための下地処理はしていません。
これを制作した時は塗装にいっぱいいっぱいで制作記録は残せてないのですがブレード・アンテナを含めて内部フレーム以外は全てガンダムマーカーエアブラシシステムで塗装しています。
因みに作品紹介はこちらかどうぞ。
HGUC ガンダムTR-6[ウーンドウォート]
ここからはHGUC ガンダムTR-6 [ウーンドウォート](試作機カラー)の作例をご紹介させていただきます。
更にMA(モビルアーマー)形態の状態です。差し替えが多いキットでしたがトップコートを拭く事で塗装ハゲもあまり気にならなかった印象です。
因みにHGUC ガンダムTR-6[ウーンドウォート](試作機カラー)のレビューはこちらからご覧いただけます。
トラブルシューティング
こちらではガンダムマーカーエアブラシシステム使用していて実際にあった、エアが出なくなったというトラブルシューティングの一例をご紹介させいただきます。まずは下の矢印部分のトリガーを押してもエアが出なくなる症状が出たという問題です。
一概には言えませんがトリガーの付け根(下の画像の緑矢印部分)のグリスがエアー缶からの有機溶媒で吹き飛んで起こる事があるようで私の場合はKUREさんの”スプレーグリース”を軽く拭きかけた事で解決出来ました。因みにエアー缶を倒したりして使用した場合に気化前の溶媒が液状で噴き出す事でグリースを洗い流してしまう事もあるようです。
同様の問題でお悩みの方は一度お試しいただけると上手く行くかも知れないのでご参考になさって下さい。これでも直らない場合はエアブラシ部分のみもクレオスさんから”ガンダムマーカーエアブラシハンドピース”として2,000円付近で販売されていますのでチェックしていただければと思います。
消耗品について
本商品を多用していると消耗品であるOリングの寿命が最初に来ると思います。このツールで一番負荷が掛かる場所であると思うので仕方ないかなと思いますが、これらの消耗品は取説記載の方法でパーツ単位で購入出来ます。またネットでは調整バルブセットとやエアホースも販売もされいますので何処が原因なのかわからない方はチェックしてみて下さい。
まとめ
以上が2018年3月に発売されたガンダムマーカーエアブラシシステムのレビューでした。
カラーの選択肢は少し狭いですが、基本的な赤、青、黄、黒、グレー、ゴールド、シルバー、ホワイト、ティターンズブルー等は商品化されているので私のような模型初心者の方には強くお勧めしたいと思います
ガンプラはもちろんですがMOBILE SUIT ENSEMBLEも塗装出来るので自分の表現の幅を相当に広げる事が可能であり、安価で低毒性、静音、後片付けが簡単な点はかなりのストロングポイントであると言えそうです。
また、塗装を経験する事によって得られる模型作りに必要な技術や知識もあると思うので見識を広げる面でも有効であると思いました。
ガンプラを始めたけれど次のステップに進みたいと感じている方には心強い味方になってくれると思うので是非チェックしてみて下さい。